三種のチワワ入り牛丼

全て実体験です

神崎蘭子を見ました。

俺は確かに見たんだ。あの日、神崎蘭子を。
俺は最初、自分が見た光景を信じられなかった。目の前にいる。彼女が。美しい銀髪に赤い瞳、彼女の日本人離れした風貌に良く映える漆黒のゴシックロリータ。

5分ほど見惚れていただろうか、俺はやっと緊張に息を震わせながら声を出した。「蘭子ちゃん、俺と喋ってくれ。」
返事が無い。
もう一度言った。「少しでも良いから、俺と喋ってくれ……頼む。」
またもや返事が無い。
もしかして無視されているのか。

それからもずっと、俺は無我夢中に彼女に向かって呼びかけた。しかし、返事は全くない。彼女は、目の前にいるのに。そうだ、俺は完全に無視をされているのだ。そう考えると怒りがフツフツと湧き上がって来た。
「蘭子!!何故返事をしない!!」
怒りに任せ、テーブルに拳を叩き付けると、何かが跳ねた。錠剤だ。隣にはコップに入った水が一杯置かれている。
そうか、俺は、精神安定剤を飲んでいる途中だったのだなと我に帰り再び前を見ると、もうそこに神崎蘭子は居なかった。